24年も前に行った旅行のことを思い出すのは骨が折れる。
細部まで思い出せないのはしかたがない。
肝心なことだけ
最大に印象に残っていることだけを
書き留めて置こうと思う。
バンコクで一泊したときには
特にこれといった感覚はなかった。
すんなりと、ではなかったかもしれないが
(そのときは、何かの事件が起きて、ネパール全土に戒厳令が惹かれていた。
予定していないところに旅行者が入れない事態も起きていたけど、
それはどこへいっても有り得たことなので、慣れていた。
中国、ペルー、スリランカ・・・)
初めて土を踏んだネパールの地で
わたしは始めての感覚を味わった。
空港におりたった時からだ。
町をバスで走っていると
奇妙な感覚。深い瞑想状態に入っているような感覚がしてた。
「やっぱりすごいねえ。ここ」
Sは特には感じていないようだった。
カトマンドゥの小さなバックパッカー向けの宿に
チェックインをして
早速、バンコクのホテルで共に足止めとなっていた日本人の男性ふたりと
一緒に地元の食堂で夕飯を食べた。
ネパールの首都、カトマンドゥで一番行きたかったのが
「パシュパティナート」いう寺院だったけど
すぐ次の日は行かなかった。
宿の近くから回ろうということになったのだと思う。
パシュパティとはシヴァの別名で
ヒンドゥの神々には幾つかの化身があり
それぞれに名がついている。
パシュパティは金の角を持つ鹿の姿をしている、といわれる。
シヴァはヒンドゥの最高神のひとりで、破壊と再生の神であるが
世界を破壊するときは、恐ろしい黒い姿をとる、といわれ
その姿が「マハーカーラ(大きな黒)」すなわち大黒天である。
日本に伝わると、大黒天は打出の小槌を持つ頭巾を被ったおじいさんの姿になった。
千手観音にしても十一面観音にしても
日本に伝わる不思議な肢体の仏像は、ほとんどヒンドゥの神々の姿がベースとなっているのだ。
さて
カトマンドゥの東に位置するパシュパティナート寺院は
ネパール最大のヒンドゥ教寺院であるばかりではなく
最古の寺院とされている。
紀元前3世紀には最初の寺院が出来たという歴史ある場所なのだ。
さらにバクマティ川に面しているが
この川が、母なるガンガーつまりガンジス川の上流にあたり
ヒンドゥ教徒にとって、ここで死んで荼毘に付される、つまり火葬されることは
その煙とともに、必ず神の世界にいけると信じられている
寺院の中にはヒンドゥ教徒しか入れないので
高台から見下ろせる絶景ポイントがあるのだという。
ネパールについて何日目かに
そちらのポイントに行った。
まるで深い瞑想状態で歩いたり食べたりしている不思議な感覚は、
ネパールの空港を降り立ってからそれまでもずっと続いており
そこに来て寺院を見下ろすと
とても気持がよく、
それは、最高潮に達した。
近くでサドゥと呼ばれるヒンドゥの修行者が瞑想していた。
サドゥの贋物もいて
旅行者にハシシ(大麻樹脂)を売りつけて暮らしているものもいるようだ。
本物か偽者かの見分けは地元のひとであればすぐに見分けがつくのだという。