およそ3時間かかって
信州の伊那にたどり着く。
日本列島はそれほど広くはないのだけど
まだ行ったことのない土地に
初めて足を踏み入れるのは
ドキドキする。
わたしねえ、
こっち(富士山麓)に移住する前、
どこに移住するか迷っていたころ、
伊那に行く夢を見たんだよねえ。
夢の話は
友人は興味を示さない。
いつだってそんなのだ。
それは不思議な夢だったのだけど、
わたしの夢の話など
これ以上興味がなさそうなので、ここでやめた。
東京から空を飛んで来て
ある、田園風景の土地に降りて来た、という夢だ。
田んぼが見えた。
茅葺屋根の家屋があり
その前に、赤い郵便ポストがあり、
その茅葺屋根の土間みたいな場所に降り立つ。
“イナ”という言葉が浮かんだ。
夢の中で
ああ、伊那に降りて来たなあ…
そう思った。
わたしはその頃、『信州かくれ里 伊那谷を行く』という本を古本屋で見つけていたので、そのせいかな、と思い、あまり深くは考えなかった。
だけど、移住後
その話は、何人かの方にお話した記憶がある。
この夢の話を15年くらい前に
伊那 在住の
シンガーソングライターの海老原芳江さんにしたことを覚えている。
彼女はわたしの夢の話を、面白がってくれて、
他の方たちに伝えてくださっていたのだ。
『伊那に空から降りてくる夢をね
見たんだって!』
結局、
わたしの人生は
富士山北麓にて、再スタートを、切ることになった。
伊那の◯◯ファームに車が滑り込んだとき、
わたしは大声をあげた!
赤いポスト‼︎
わたしは興奮して友人に話しかけた。
赤いポストなのよう、
赤いポストが空から見えてね
そこに降りて来たの。
そこは、伊那だったの。
夢とおんなじだあ〜〜!
友人は
『赤いポストなんて、どこにでもあるでしょ?』
と宣う。
ないよ!無い‼︎
17年前の夢だよ、無いよ‼︎
(全く理屈になってないけど…)
17年前も
今も
赤いポストなんぞは観光施設のランドマークとしてしか存在しないのだ。
それに、
生まれて初めて“伊那”に来たわたしの前に
“赤いポスト”
この夢とのシンクロはどうよ〜!
さて、
このことを封切りに
この旅はわたしには
まったく、不思議なことだらけだったの。
ここからは想定内のお話。
山羊さんがたくさんいるファームの
山羊まつり!
見学したこの施設の山羊たちは
みな、幸せそうだった。
なので、
担当者ともお話した後、
友人は、こちらに山羊たちを譲渡することに決めた。
ミシシッピアカミミガメも!これも決めてとなった。)
なにしろ、山羊愛に満ち満ちていたので
ここは安住の地として安心できそうだ、
という結論に達した。
さて、
ファームを後にして
小雨のけぶる伊那平野を
今度は“伊那谷”に向かって走る。
絵に描いたような田園風景が広がる。
初めて来たのに
なぜか懐かしい。
天竜川やその支流に沿った谷を
『伊那谷』と呼ぶらしい。
山々の懐に入って行く。
そこに
もう一つの目的地
“分杭峠”があるはずだ。