うっわ~!
何あれ⁈
墓参りが終わったあと
14:14
姉が突然叫ぶ。
幻日だ。
富士山周辺ではそれほど珍しいものでも無いのに
東京から来た姉は
生まれて初めて見たと言い
大はしゃぎたった。
『吉祥よ!キッショウ~‼』
はい、そうですね。
そういえば、前回の墓参りの時には
白い鷺が上空を舞い
『言祝ぎよ~!ことほぎ~‼』
と、やはり大騒ぎだった。
そういえば
今朝、河口湖駅にお迎えに行った時
開口一番で、こんなことを言うのだ。
『わたしの夢が叶ったの~~~‼』
どんな話かと思えば
『エリック・クラプトンの東京公演があるのよ~!』
なんだ、そんな夢か…
姉がハードロックに目覚めたのは
わたしがまだ高校一年の頃で
サルトルやボーボワールを生意気にも読み始めていた頃だ。
日曜日の朝ともなれば
姉の部屋から大音響で聴こえてくるハードロックに
どうにかしてよ、と耳を塞いでいたものだ。
しかし、まてよ。
姉がエリック・クラプトンに青春を捧げ
それは、遠い遠い昔の話だったけど
つい最近
姉は変なことを言い出したのだ。
『わたし、ミセス クラプトンなの。』
なんなの、それ…
夢を何度となく見るのだそうだ。
ニューヨークに住んでいて
エリック・クラプトンのワイフである、という、それがありありと現実味を帯びて感じられるのだと…
普通であれば
バッカじゃないの!
妄想だよ、モーソー‼
と、思うところだけど
なんだか、切捨てられなかった。
それ、パラレルワールド(平行世界)だよ、とわたしは言った。
その解釈を姉はいたく気に入って
そうなのね、パラレルワールドなのね、と
自分自身を納得させるように頷いていた。
で
エリック・クラプトンの東京公演の話。
69歳の年、ワールドツアーを行った彼は
それを最後にツアーをやめたそうだ。
しかし、特別に
東京武道館で、五日間だけ
ツアーを行うとの発表があり
小躍りして喜んだ姉は、なんとかチケットを手にいれようと奔走する。
しかし
ガラ系の携帯では限度あり
嫁いだ娘の所で、スマホで申し込んでもらうと…
なんと、初日の
S席が取れましたあ~⁉
そういうことらしい。
愛娘が言うことには
『お母さんがクラプトンを日本に呼んだんじゃない?』
まったく、親子共々……
うんうん
それは良かったね。
何だかわたしも嬉しくなってきた。
所で、ミセス クラプトンは
どんな暮らしをしてるの?
そりゃあもう、セレブな暮らしよう、
五番街でショッピングとかしてるわよう。
さいですか…
でも、ホラ
ハワイのパラレルワールドもあるじゃない、マッサージとかしてもらってる…
おうおう
あったねえ、
そのマッサージ、なんて言ったっけ?
えーっと
マヒマヒ?
と、わたし。
バッカ!それ、魚じゃない?
あれ?
マイマイじゃなくって…
うわっ
どうしても二人して思い出せない。
あ、あ、
ハロハロ?
キャーキャー!
違うわよ~
もう、涙が出るほど笑ったその後に
あ、ロミロミ???
やっと思い出して
再び笑い転げる姉妹。
母は会話について来れずに
目を白黒。
それにしても
そんなにいいかなあ
この方…
男性の好みは
極端に違う姉とわたしなのでした…
わたくしの好みは
ブライアン・メイ
ねえねえ
お姉さま
パラレルワールドじゃなくって
パラノイア ワールドだよ‼