「元気ですか?
先日はお墓参りお疲れさまでした。
パパも喜んでいたでしょう。
実はここ何日か夢に出てきます。
いつもニコニコ微笑んでいます。」
昨日、姉からこんなメールが届いた。
3月21日の春分の日に
母とふたりで、富士宮にお墓参りに行った。
姉は仕事でいけないので
お塔婆を立ててほしい、と母に頼んでいた。
今年はふたりだけでいつものようにお墓をピカピカにして
母が用意したアップルパイを供えた。
お詣りのあとは、お供物は持って帰るので
母はいつも自分の好きなものを買うのだ。
姉が父の夢を見るというのは珍しいことなので
早速電話してみた。
「ねえねえ
パパの夢って、どんな夢?」
「それがねえ・・・」
そのあとの言葉には度肝を抜かれた。
「わたしが白いドレスを着ているんだけど
パパが隣にいて、腕を組んで歩いているのよ。
結婚式みたいなの。
それでパパはニコニコしてるの。」
どっひゃ~ん!
「それがあなたたちがお墓参りに行った朝に見た夢」
通常であればそれは姉の願望だろう。
姉は結婚式を挙げていないのだ。
わたしはうんと若いときに一度目の結婚式を教会で行なったので
バージンロードを父と腕を組んで歩いている。
だけど、父が在命中にあっという間に離婚して
そのことを姉には散々言われたものだ。
曰く
「かっこつけてキリスト教徒でもないのに教会で式を挙げるなんて。
友達だってキリスト教式で結婚式を挙げたひとはみんな離婚してるよ。」
はい
さようでございます。
だから、二度目は「角隠し」で行なった。
おかげさまでまだ離婚していない。
「わたしがKちゃんを産むって決めたときね
パパは、ああこれでまともな結婚式は挙げられないな。って
すごくがっかりしていたんだって。」
そうなんだ。初めて聞いた。
父は姉の結婚式でバージンロードを腕を組んで歩きたかったのかもしれないなあ。
「でもね、教会じゃないんだけどね、教会じゃないのよ」
もしかして、昔さんざんわたしのことを揶揄したことを思い出したのだろうか。
わたしは、父の気持を思った。
「ほら、お姉ちゃん、最近前世はイタリアにいたってよく言うじゃない?
そのときパパとバージンロードを歩いたかもしれないよ。
どっちがどっちかわからないけど」
「そうねえ・・・」
すてきな夢だったのにしんみりしてきた。
話は今年の六月か七月に予定している
父の27回忌の算段のことになり
また、今度ゆっくり、といって電話を切った。
しかし・・・
ぷぷぷぷぷ~!
白いドレスでバージンロードだって!
姉はもう還暦を過ぎたのである。