暦の上だけ
春がきた、と思ったけど
やはり弥生の雪は
湿っぽい。
いい感じに崩壊している。
早く土に帰っておくれ…。
雪が降るたびに
喜び勇んで
8の字走りをしたあの犬を
今日も思い起こす。
と、いうよりも
思い出さない日など
これからも、ないのだ。
飼い主のところへ行って
お線香を一本。
雪が降ったといっては
ミソサザイが囀ったといっては
ダンコウバイがほころびたといっては
泣いて
泣いて
泣いて
思い出して、泣いて
感謝して
感謝して
感謝して
いつか
時が哀しみを和らげてくれるから。
愛を知ってしまった人は
辛いんだ。
でも、
知らない人よりも
遥かに幸福だよ。
しめやかに
また、雪が
降る。